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近年の免疫学領域の研究の発展は目覚ましいものがあり、フローサイトメトリー解析を発展させた単一細胞レベルでのMultiomics解析等の手法により、免疫応答における詳細な分子基盤の理解が進んでいる。一方で、感染性微生物の宿主への侵入は、主に粘膜面を介することが知られるが、通常、粘膜面には様々な常在性微生物が存在することから、両者の識別機構については不明な点が多く、感染症への防御機構としての免疫応答の詳細な理解には、さらなる研究の発展が望まれる。こうした研究の積み重ねが、未知の感染症に対する有効なワクチン開発や、体内の様々な生理反応との関連性が指摘される腸内細菌叢の働きを正確に理解するための重要な試みと考えられる。
本医学部では、設立時より、初代医学部長である佐々木正五教授により、「無菌マウス」を使用した細菌学研究の基盤が整備され、現在まで、様々なヒト細菌感染症モデルを用いた研究がなされてきた。また、BSL3実験室を保有し、HIVやSARS-CoV2などの高病原性ウイルス感染症研究も行われている。本センターでは、こうした感染症研究者とも連携しつつ、疾患要因の一部に微生物感染を有する様々な病態の解明を目指し、臨床各科との共同研究体制を確立する。その過程で、多くの大学院生を受け入れ、共通の実験基盤を共有しつつ、新たな研究アプローチを模索する。
本学講堂に掲げられた佐々木正五先生の言葉には、「基礎医学と臨床医学の有機体化」、「学際領域の統合」といった「共存の医学」の重要性が述べられている。粘膜面を介した微生物、宿主の相互の応答研究は、そうした方向性に合致した研究領域と考えられる。多くの研究者の協力を仰ぎ、本学らしい研究を展開したい。
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