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我々は様々な環境因子(微生物、重金属、生活環境、労働環境、地球環境、社会環境など)に取り囲まれており、健康状態の維持や疾病の発症には、環境因子が大きく関与しています。現在世界的に平均寿命の延長がみられますが、健康的に年を取ること、すなわち健康寿命の延伸には、成人期における環境因子のみならず、胎児期や、小児期の特定の時期における環境因子の関与が大きいことが明らかにされつつあります。生活習慣病(がん、心筋梗塞、糖尿病、肥満など)やアルツハイマー病などの成人発症の疾患はもとより、子どものアレルギー性疾患、精神神経発達障害、代謝・内分泌系の異常などと、胎児期や小児期の化学物質曝露との関連が疑われています。
近年急速に発達した分子生物学を基盤とした新しい生命科学研究により、様々な疾患の病態が分子レベルで解明されるようになりました。臨床面への応用としては、新しい診断法や治療薬の開発などめざましいものがあります。このような流れの中で、疾病予防・健康増進をめざす衛生学や公衆衛生学の分野も変革の時を迎えています。そこで、様々な環境因子が健康に与える影響を分子レベルで解析し、その結果(根拠)に基づく正しい予防法を確立し、広く発信することが我々の責務であると考えています。
現在の取り組みとしては、30年にわたり我々が開発・維持している高学習能を有するTokai High Avoider (THA) ratを用いた、微量化学物質の高次脳機能発達を中心とした次世代影響評価や、がん細胞の代謝や微小環境の適応に着目し、がんの進展メカニズムを分子レベルで明らかにすることにより、がんに対して高感受性群を同定するバイオマーカーの探索や新規の予防薬の開発などが主なものです。いずれも疾病の一次予防を目指した取り組みです。
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