大学院医学研究科 教員紹介 秦野 伸二

  • 領 域  : 生体機能学

  • 教員氏名 : 秦野 伸二(ハダノ シンジ)

  • 取得学位 : 博士(医学)

  • 身分・役職: 基礎医学系生体機能学 教授

  • 専門分野 : 分子神経科学、神経変性疾患

【研究業績】
運動ニューロン疾患発症の分子機序解明及び治療法開発

【所属学会】
日本神経化学会、日本分子生物学会、米国人類遺伝学会、日本神経科学会、北米神経科学会、日本実験動物学会、日本難病医療ネットワーク学会

研究内容

 神経変性疾患における神経細胞の機能障害ならびに神経細胞死のメカニズムに関しては、近年の分子病態解析により飛躍的にその理解が深まりつつある。特に、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)をはじめとする多くの神経変性疾患では、タンパク質のコンフォーメーション異常に起因した異常タンパク質の脳神経系組織での蓄積が、神経細胞の機能障害ならびに神経細胞死に深く関わっているとされている。さらに最近では、これら神経変性疾患の発症に細胞内物質移送系の異常が関わるとの報告がなされている。我々は、2001年に遺伝性ALSの原因遺伝子としてALS2遺伝子を発見し、その遺伝子産物であるALS2が低分子量G蛋白質Rab5の活性化因子であるとともに、細胞内においてエンドソーム及びマクロピノソームの動態調節機能を介してオートファジー・リソソーム系のタンパク質分解を制御していること、それらの機能を介して神経細胞での軸索伸長に寄与していることなどを明らかにしてきた。また、日中共同研究により、孤発性ALS患者において、これまでに報告例のないSQSTM1及びNEK1遺伝子変異を同定するとともに、孤発性ALS患者血液中で特異的に変動するマイクロRNA分子の特定にも成功している。一方、動物モデルを用いた研究では、SOD1変異ALSマウスモデルにおけるALS2ならびにSQSTM1の個体レベルでの疾患症状への影響、特に神経細胞のオートファジー・エンドリソソーム系の膜小胞移送を介したタンパク質分解系の調節機序について明らかにした。現在、我々は、ALS2およびその関連因子の分子機能解析を基軸として、神経細胞におけるオートファジー・エンドリソソーム系をはじめとした膜・物質移送系機能、および異常タンパク質の蓄積・分解についての解析を、患者由来iPS細胞から分化誘導した神経細胞ならびに各種遺伝子改変マウスを用いることにより、分子生物学的、生化学的、細胞生物学、実験動物学的手法を駆使することにより進めている。さらに、工学部との連携により、マイクロ流体デバイスを用いた神経細胞軸索内膜小胞輸送系の新規解析技術開発も進めている。そして、最終的にはALSの発症分子メカニズムを解明し、その治療方法・治療薬開発への展開を目指している。

○ホームページURL
http://mls.med.u-tokai.ac.jp/hadano/

○連絡先
shinji@tokai.ac.jp

主な論文

  • Hadano, S., Hand, C. K., Osuga, H., Yanagisawa, Y., Otomo, A., Devon, R. S., Miyamoto, N.,
    Showguchi-Miyata, J., Okada, Y., Singaraja, R., Figlewicz, D. A., Kwiatkowski, T., Hosler, B. A., Sagie, T., Skaug, J., Nasir, J., Brown, R. H., Jr., Scherer, S. W., Rouleau, G. A., Hayden, M. R., and Ikeda, J. -E. (2001) A gene encoding a putative GTPase regulator is mutated in familial amyotrophic lateral sclerosis 2. Nat. Genet. 29 (2), 166-173.

  • Hadano, S., Benn, S. C., Kakuta, S., Otomo, A., Sudo, K., Kunita, R., Suzuki-Utsunomiya, K., Mizumura, H., Shefner, J. M., Cox, G. A., Iwakura, Y., Brown, R. H., Jr., and Ikeda, J. -E. (2006) Mice deficient in the Rab5 guanine nucleotide exchange factor ALS2/alsin exhibit age-dependent neurological deficits and altered endosome trafficking. Hum. Mol. Genet. 15 (2), 233-250

  • Hadano, S., Otomo, A., Kunita, R., Suzuki-Utsunomiya, K., Akatsuka, A., Koike, M., Aoki, M., Uchiyama, Y., Itoyama, Y., and Ikeda, J. -E. (2010) Loss of ALS2/alsin exacerbates motor dysfunction in a SOD1H46R-expressing mouse ALS model by disturbing endolysosomal trafficking. PLoS ONE 5 (3), e9805.

  • Sato, K., Otomo, A., Ueda, M. T., Hiratsuka, Y., Suzuki-Utsunomiya, K., Sugiyama, J., Murakoshi, S., Mitsui, S., Ono, S., Nakagawa, S., Shang, H. -F., and Hadano, S. (2018) Altered oligomeric states in pathogenic ALS2 variants associated with juvenile motor neuron diseases cause loss of ALS2-mediated endosomal function. J. Biol. Chem. 293 (44), 17135-17153.

  • Sato, K., Suzuki-Utsunomiya, K., Mitsui, S., Ono, S., Shimakura, K., Otomo, A., and Hadano, S. (2023) Central nervous system specific high molecular weight ALS2/alsin homophilic complex is enriched in mouse brain synaptosomes. Biochem. Biophys. Res. Commn. 638, 168-175.